ナイフワークショップ体験レポート3。ナイフメンテナンス編



こんにちは!のとむらです。引き続きナイフワークショップ体験レポート第3弾!

今回はナイフメンテナンス編ということで、ナイフの基本的な研ぎ方から保管方法、知っておくと役立つ知識などを教わってきました。

どんな名刀もナマクラに変えてしまうほど研ぎが下手くそな私は、果たして研ぎの技術を身につけることができるのでしょうか?

え、そんなのどーでもいいって?たしかに!!

 

研ぎ方を教わる

「砥石は平面が命です。」

インストラクターの先生は手始めに、砥石の面取りする様子を見せてくれた。ナイフを研ぐと砥石の表面がでこぼこになるので、そのつど平面に戻す必要があるのだと言う。

「バッテンにクロスさせるように動かすと良い平面ができるんですが、それでも中央は少しへこんじゃいますね。」

ナイフのプロである先生ですら、砥石の面取りは難しいらしい。

「研ぎ方は色々あるんですが、今日は一番わかりやすい方法をお伝えします。」

そう言って先生はナイフを砥石にベタッと寝かせ、そこから18度くらい持ち上げた状態でゆっくりと研いでみせた。

「小刻みにシャカシャカ往復させるのも間違いではないんですが、それだと部分ごとで角度が変わってきちゃうので、あまりおすすめしません。」

部分ごとで角度が変わると、物を切るときに刃が引っかかり、キレイに切れなくなるらしい。なるほど、寿司職人みたいな研ぎ方はダメなのね。

先生のおすすめする研ぎ方は実にシンプルだ。大きな弧を描いて、根元から刃先まで一回の動作で研ぎきる。

口じゃ何言ってるか分からねえよタコ。と思った読者のために、写真を撮らせていただいた。ぜひ参考にしてほしい。

角度を一定に保つことが重要だが、刃先に近くなるにつれて砥石に接触しなくなるので、最後のほうは刃の根元を少しずつ浮かせながら弧を描くと刃先までしっかり研げるとのこと。

「急いで研ぐと、弧が小さくなるので刃の根元部分がちゃんと研げない。力を入れると角度がブレやすくなるし砥石も早く減っちゃう。とにかくゆっくり力を抜いて大きく動かすのが、上手く研ぐコツです。

反対側も。

先生いわく、刃付け角度は15度〜20度くらいがおすすめ。しかし、慣れてくると自分に合った角度というものが自然と身につくらしい。

さらに先生はこんなことを教えてくれた。

「今の動作だけだとエッジ形状がV字になります。この状態だと切れ味が良いんですが、堅いものを何回か切るとすぐに切れなくなっちゃうんですよ。アウトドアでの使用が目的なら、マイクロべベルをつけて耐久性を上げることをおすすめします。

マイクロべベルの付け方もシンプル。ひととおり研ぎ終えたら、刃の角度だけをさっきよりも鈍角にして、同じ研ぎ方をするだけだ。

ただし、狩猟で獲物の肉を削ぐときはハマグリ刃にしたほうが良いらしい。「べベルの範囲が広かったり、マイクロべベルが付いたナイフだと肉を削ぐときに引っかかりやすくなる。猟師さんの中にはそれを嫌って元々フラットグラインドだったナイフをハマグリ刃に研ぎ直す人もいますね。」

もはや研ぎ方に正解はない。今回先生は、一般人がキャンプなどをするのに適したエッジ形状を教えてくれたのだ。

ちなみに今回、参加者の一人に猟師さんがいた。彼がこの日のために持ってきたのはモーラナイフのクラシック。小さいが、それ一つで鹿や猪の解体をやってのけると言っていた。か、カッコイイ。

実際に研いでみる

先生が手本を見せてくれたので、今度は我々参加者が研ぐ番だ。それぞれ持ってきたマイナイフを、先生と熱血ナイフトークをしながら思い思いに研いでいく。

アホな私はマイナイフを家に置き忘れるという痛恨なミスをしたので、運営側からモーラナイフをお借りして研ぐことに。

ただ、正直に申し上げるとお借りしたナイフを研ぐことに抵抗があった。私はナイフを研ぐのがめちゃめちゃ下手なのだ。どんな切れ味の良いナイフも、おままごと包丁に変えてしまう自信がある。

しかしここまできたらやるしかない。先生に教えられたとおりに、恐る恐る研いでみた。

研ぎ終えた後、紙を切ってみる。

「お・・・?」

研ぐ前に紙を切ったときよりも、刃の入りがスムーズだ。どうやら切れ味が一段向上したらしい。すごいや、ビビって3往復しか研いでないのにこれか!

手研ぎに一切の希望を持てなかった私に、光明が差した瞬間である。

そのあと、参加者さんの一人が「よかったら研いでみますか?」と、マイナイフを私に貸してくれた。なんて優しいのだろう。

しかも彼が貸してくれたのはロールアップヒルトと呼ばれるフォールディングナイフ。ブレードをオープンするときにヒルトが一緒に立ち上がるのが特徴なのだが、これがなかなかレアで、市場にはほとんど出回っていない代物だ。

さっきお借りしたナイフ以上にビビる私。持てる力をふりしぼり、なんとか切れ味を落とすことなくお返しすることに成功。

先生はその間、参加者さんが持ってきたマイナイフ、ヘビーデューティーの刃の状態が相当悪かったらしく、一生懸命研ぎ直しをしている。

「ナイフは一度やっちまうと(刃に深刻なダメージを与える)戻すのが大変なんですよ(笑)」

砥石を徐々にきめ細かい番手に切り替え、最後に革砥で仕上げる。先生のセンスと熟練技により、ボロボロだったヘビーデューティーは見事に復活した。

おすすめの砥石を教わる

先生いわく、おすすめの砥石はセラミック。普通の水砥石と違って水を吸わせる時間が少ないため、時間短縮が図れるからなのだそう。

また、値段は高いがオイルストーンも番手が細かく、研ぎ減りしにくいのでおすすめらしい。

「なんでオイルを使うのかと言うと、単純に産地の問題で、アメリカで採れる砥石は少し油分を含んでいるからオイルとの相性がいいんですよ。」

アメリカの砥石といえばアーカンサスストーンが有名。私も名前だけは聞いたことがある。しかし元となる石を掘り尽くしてしまったらしく、今では超レア物なのだそう。もし見つけたら問答無用で買うしかねぇ。

日本の場合は水砥石が主流。値段が高い砥石ほどナイフの切れ味も良くなる傾向にあるが、高いものだと4万円。さすがにこれは手が出せない(笑)

「安い砥石でもじゅうぶんですが、さすがに100均の砥石はダメですね。これは本気でおすすめできません。」

なるほど。私はスパイダルコのトライアングルシャープメーカーというイージーアイテムを持っているので、今後しばらく水砥石を買う予定はないが、安物買いの銭失いにならないよう気を付けたい。

ナイフ鋼材について教わる

先生は鋼材の違いについても教えてくれた。

ナイフの鋼材は大きく分けると炭素鋼とステンレス鋼の2種類あることは、ナイフ好きであれば誰もが知っている話だが、先生の知識はさらに深い。

「炭素鋼は柔らかくて、ステンレス鋼は硬いイメージがありますが、実際はその逆。炭素鋼のほうが鋼材としては硬いんです。」

なんとも目から鱗な話。炭素鋼のほうが研ぎやすいので柔らかいのかと思っていたが間違いだったのか!

「じゃあなんで炭素鋼のほうが研ぎやすいのかと言うと、粘りがあって砥石に吸い付くから。摩擦係数の違いとでも言うんでしょうかね・・・炭素鋼は摩擦が強いので研ぐと柔らかく感じるんですよ。反対にステンレス鋼は摩擦が弱いので滑りやすい。それで硬く感じるんです。」

へぇ、へぇー、知らなかった・・・。勉強になりすぎて頭が追いつかないのであった。

メンテナンス・保管方法を教わる

「炭素鋼ってやっぱり錆びやすいんですか?」

参加者さんから、こんな質問が出た。

「錆びやすいですね。モーラのヘビーデューティーなんかだと水に濡れたまま放置すると30分ぐらいで錆びちゃいます。

30分しか持たないとは厳しい。リンゴ切って、そのままうたた寝したら一発アウトじゃないか。

「でも水気をすぐに拭き取れば、まず錆びることはないですよ。保管するときに椿油を塗る人もいますが、僕はやったことないですね。」

先生の場合は仕事でナイフをひっきりなしに使うのもあって錆び知らずなのだろう。押入れにしまいっぱなしの人は、油を塗っておいたほうが良いかもしれない。

椿油も良いですが、おすすめはオリーブオイルです。ちょっと前はリップクリームも流行りましたね。リップクリームは着火剤にもなるんですよ。」

塗る油ですら色々な種類がある。今一度ナイフの奥の深さを痛感させられた。ちなみにサラダ油は少し水分を含んでいるのでダメらしい。

「サラダ油に水分が含まれているのは、おそらく天ぷらが関係してるんじゃないかなと。天ぷらがカラッとおいしく揚がるタイミングって、水分が蒸発する瞬間なんですよ。」

その話を聞いて急にお腹が減る。先生はナイフのプロであると同時に、天ぷらを食べたいと思わせるプロだった。

「あとナイフの扱いで気を付けることは、熱ですね。」

「熱!?」

参加者一同、驚愕。

「刃先に50度以上の熱を与えてしまうと、鋼材の中の組織バランスが崩れて、研いでもそこだけ切れ味が戻らなくなっちゃうんですよ。」

科学的な話だったので難しかったが、ナイフは焼き入れと焼き戻しという工程をふむことによって鋼材の中の組織バランスを絶妙な状態に保っているらしい。そこに余計な熱が加わるとバランスか崩れてしまうと言うのだ。

「今流行りのファイヤースターターも要注意ですね。火花が刃先に当たったら一発でおじゃんです。」

なるほど。ファイヤースターターは必ずブレードの背でこするようにしたい。

モーラナイフの良さを教わる

このワークショップはモーラナイフのイベントなので、話題はモーラナイフが中心だ。

先生はモーラナイフがなぜ切れ味が良く、コストパフォーマンスに優れているかを教えてくれた。

「モーラナイフは良い鋼材を使っているので切れ味バツグンなんです。安さの秘密はハンドルにあります。

モーラナイフのハンドルは、クラシックモデル以外ほぼプラスチックで出来ている。このプラスチック自体が安価で、ハンドルの製造工程はブレード鋼材を液体状態のプラスチックに浸けて固めるだけ。

材料費も時間も大幅にカットでき、大量生産ができるからこそ、あれだけの低価格を実現できるのだという。

モーラナイフの鋼材がなぜ良いのかというと、生産国であるスウェーデンの自然環境が良いからなんですよ。環境が良いと、そこで採れる砂鉄の質も自動的に良くなるので。」

スウェーデン鋼は日本からの評価も高いらしい。日本の刃物職人は、硬すぎる鋼材を柔らかくするためにスウェーデン鋼を織り交ぜることがあるほどだ。

もともと北欧ナイフは好きな私だが、この話を聞くとさらに好きにならざるを得ない。

先生の話は説得力があるうえ分かりやすい。若い頃から刃物屋に通いつめ、研ぎ方を教わったり、鋼材の勉強に熱を注いでいたという。生粋のナイフフリークである。

スタッフさんがふるまってくれたレンメルコーヒー。酸味がなく、スッキリとした味わい。

銃刀法対策を教わる

僕はね、よく警察から手荷物検査されちゃうんですよ。去年も2、3回あったかな?」

先生はパッと見た感じ、爽やかなアウトドアマンという印象だ。日に焼けており、筋骨隆々。控えめに言っても、街中でヤバいことをするようには見えない。

そんな彼をなぜ警察が目をつけるのかというと、「風景のなかで一人だけ光り輝いていたから」という理由らしい。

思わず笑ってしまった。なるほど、良い意味で目立ってもダメなのか。

「一回署に連れて行かれると、仕事で使うからと事情を説明してもなかなか解放してもらえないですね。」

先生の場合はナイフを扱うことが仕事なので、持ち歩いても正当な理由にあたる。どうしても解放してくれないときは、そのとき向かおうとしていた取引先に電話してもらって、なんとか事なきを得ているとのこと。

正当な理由を証明するには、物的な証拠が必要だと感じましたね。たとえばキャンプにナイフを持っていくんであれば、そのキャンプ場を予約している証拠とか。説明するだけだと分かってもらえないことが多いです。」

なんて厳しいんだ日本。ナイフ好きには肩身が狭すぎる。

すぐに使えない状態にしておくのも大事です。僕はナイフを持ち歩くとき、袋を三重くらいに重ねてガムテープでぐるぐる巻きにして・・・これやるとすごい見栄え悪くなるんですけど(笑)そうやって対策してます。」

運が悪いとナイフは没取されてしまう。もしもの為に、持ち歩くときは一本だけにしておいたほうが良さそうだ。

ナイフトーク全開

先生のナイフトークは止まらない。

「ヘビーデューティーは万能型のナイフですね。刃の先端が細いのでノッチを作るのにも最適。ガーバーグは細かい作業には向かないけど破壊力のある4番バッターみたいな感じです。」

モーラナイフを使う場合、ガーバーグを主力にし、ヘビーデューティーをサブナイフにするとそれぞれの特性が活かされるのだという。

「ナイフ好きが集まると、置いてあるナイフを見て勝手に手に取っちゃう人がいるんですが、あれはダメ。マナー悪いし、なにより事故の元です。」

たしかに。初対面ならともかく、友人どうしならついやってしまいそうな行動だ。人のナイフを見せてもらいたいときは、「よければ見せてくれないか?」と一声かける。このワンクッションが安全につながるのだそう。

「今日ナイフで試し切りに使った木も、ちゃんと山の神様にお供え物をして、木の成長に影響ない部分を選び抜いて持ってきたものなんですよ。」

先生は自然環境の保護活動もしており、ナイフだけでなくアウトドア全般に詳しい。ときどき良質な砥石を求めて山に入ることもあるらしい。

そんなこんなで、ワークショップ終了。楽しすぎてあっという間だった。

モーラナイフ「クラシック」シリーズのコーナー。

ウッドカービング用のナイフなんてのもある。いつかやってみたい。

 


モーラ・ナイフ Mora knife Classic 1

 


モーラ・ナイフ Morakniv Woodcarving kit

 

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